長屋を解体する際の法律上の注意点や問題は何かありますか?
現在住んでいる長屋の取り壊しを検討しています。長屋の解体というのは一般住宅の解体とはいろいろと違ってくると思いますが、法律上、どのような点に注意をして工事を進めていけばよいでしょうか。住民からのクレームやトラブルを防ぐためにしておくべきことはありますか?
区分所有法の取り決めに応じて、工事の承諾を得たり施工を行う必要があります。
区分所有法
区分所有法とは、「建物の区分所有等に関する法律」の通称です。この法律は昭和37年に制定され、複数の区分所有者が一棟の建物を区分して所有するための規定をうたっています。長屋を解体する際には、この法律に従って手続きを進めていく必要があります。
主な注意点
柱・梁は共用部分
長屋の切り離しを行う場合に、柱や梁の切断が必須となりますが、これらは区分所有法で共用部分とされています。
(区分所有法)
(共用部分)
第四条 数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならないものとする。
2 第一条に規定する建物の部分及び附属の建物は、規約により共用部分とすることができる。この場合には、その旨の登記をしなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
柱や梁は建物全体を支える構造の一部分なので、たとえ自分の敷地内にあったとしても、各所有者の共用物であることが前提となります。
共用部分の工事には各所有者の合意が必要
共用部分を解体したりリフォームをする場合には、各々の所有者の合意が必要となります。
(区分所有法)
(共用部分の変更)
第十七条 共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。
2 前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。
建物を切り離す場合には全所有者の4分の3以上の合意と、隣人の合意が必須条件となります。
各所有者に合意をする義務はない
各所有者には工事の合意をする義務が課せられていません。合意をするかどうかは各個人の裁量ですので、各々の所有者に条件を提示しながら交渉を進めていく必要があります。
早めから準備を
以上のような取り決めから長屋を切り離す際には、手順を踏んで交渉等を進めていく必要があります。所有者との交渉に時間が掛かることが十分に考えられますし、所有者を特定するだけでも時間が掛かることがあります。希望の時期に工事を行うためには、早い段階から準備を進めていくことが大切です。
時にはプロの力を借りる
交渉が難航する場合には、弁護士に相談をするのも大切です。話を進める中では、区分所有法のみならず民法全般など法律への深い理解が必要となることがあります。時にはプロに頼り、少しでも有利に交渉を進めていくのが良いでしょう。