非住宅系活用(オフィス) 土地の非住宅系活用のススメ。賃貸オフィスにはどのようなメリットがある?~
賃貸オフィスと経済動向
賃貸オフィス市場で需給が拮抗する空室率は5〜7%と言われていますが、三鬼商事(東京都中央区)発表のデータによると、東京都心5区における2019年7月の平均空室率は1.71%と極めて低い水準にあります。2009年7月は7.57%でしたので、この10年間に貸主の優位性が高まり、それに伴い坪あたりの平均賃料も2万170円から2万1,665円と約7.4%上昇しました。
一方、総務省が運営するサイト「統計ダッシュボード」によると、2009年7月の消費者物価指数(総合)が2015年基準の97.0%であったのに対し2019年6月が同101.6%ですので、10年間で5%弱の上昇に留まります。都心5区におけるオフィス賃料の上昇率は、消費活動全体の中でも非常に高いのです。
時代とともに変わるオフィス像
一口にオフィスと言ってもさまざまな形態があります。 オフィスビルの代名詞的存在と言えば、今でも霞ヶ関ビルを挙げる人は多いでしょう。しかし、働き方の多様化が進む現在、フリーランスや個人事業主などを中心に意識的に働く場を選択する人が現れ、郊外にも従来のイメージと異なるオフィスが増えてきました。
神奈川県鎌倉市は、その受け皿となる地域です。サーフィンを趣味とするフリーのデザイナーを思い浮かべてください。早朝に海に入り、家に戻ってSkypeで打ち合せをしてまた海に戻る。そんな生活スタイルもあり得ます。 ですが、自宅で緊張感をもって働くことが難しいときもあるでしょう。そのようなニーズに応える場がシェアオフィスです。シェアハウスがキッチンなどを共用する住宅であるのに対して、シェアオフィスはコピー機や打合室などを共用します。 あるいは、都心部に本社を置き、自然豊かな郊外にサテライトオフィスを設けるという企業もあります。社員がより人間的な生活を送ることを目的としていたり、災害時におけるBCP(事業継続計画)の一環として設けたりするなど目的はさまざまにあります。
収益物件としての魅力
収益物件として見た場合、オフィスにはどのような魅力があるのでしょうか。
①賃貸住宅と比べ収益性と安定感に優れる
元来オフィスが多い地域での計画であれば、コンセプトを練らずとも成功する可能性は高いでしょう。オフィスは事業により価値を生み出す場ですので、賃貸住宅に比べて賃料や保証金を高めにすることができ、安定した経営を見込めます。
②設備に要する建築費が割安
オフィスに必要な設備は、住宅に比べて多くありません。共同住宅の場合は各住戸にトイレ、洗面、浴室、キッチンが必要ですが、オフィスには共用のトイレと給湯室があれば事足ります。 その状況を逆手に取った企画もあり得ます。例えば、シャワー室や駐輪場を充実させて自転車通勤を推奨する企業への訴求力を高めるなど、立地条件にあった企画ができればオンリーワンの物件として高めの賃料を設定できるでしょう。
③立地や業種によっては小さな土地でも
郊外の小さな土地でも可能性があります。山や川が近くにあればハイキングやランニングを愛する人たちが働くベンチャー企業に向けた一棟貸しのオフィスを企画したり、ベッドタウンであれば子どもと一緒にいられるオフィスにするなど、条件に合ったコンセプトを考えれば良いのです。 都心部にあっては、少人数のデザイン事務所などに30㎡未満の小規模オフィスの需要がありますが、近年この規模のオフィスを探そうとすると物件が減っていることに気がつきます。平成23年に施行された「東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例」にて、指定された道路の沿道に建つ建築物に対して耐震診断や耐震改修などに要する費用への助成などがなされてきたことで、小規模オフィスが入る古ビルが共同住宅に建て変えられているのです。
収益物件としての注意点
賃貸オフィスを検討するにあたって、どのような点を注意すべきでしょうか。
①立地を選ぶ
いかにコンセプトを練ったとしても、法令上の制限がある場合もあります。都市計画法では13種類の地域が定められており、そのうち建築基準法によって第一種低層住居専用、第二種低層住居専用、第一種中高層住居専用、田園住居の各地域においては事務所専用の建築物を建てることができませんし、第二種中高層住居専用地域と第一種住居地域では、建築できる事務所の規模に制限があります。 また、用途地域的には可能であっても、駅から遠く離れた場所などでは単用途の大規模オフィスの需要はあまりないでしょう。
②景気が悪化すると空室不安が生じる
2019年現在は空前の貸し手市場と言えますが、世界的な景気の先行きが不透明にもなってきました。2010年から数年間は空室率9%前後で推移していましたので、景気後退や大規模な自然災害などによる経済活動の低下が懸念されます。
見たことのない新しい働く場所をつくる
多様な価値観が認められるようになってきた今、新しい働き方の容れ物としてオフィスもさまざまな可能性が考えられる時代となりました。収支計算やマーケティングなどによって企画される従来のオフィス以外にも、発想を自由に膨らませ、まだ見ぬ新しい働く場をつくることで社会をより良く変えて行くことも面白い選択ではないでしょうか。