解体と自治体の助成金
空き家対策は地域全体の問題
今年10月に行われ景気の減速要因と考えられていた消費税増税は、過ぎてしまえば不動産の市場では駆け込み需要にもならず、今のところ大幅な地価下落の要因にはなっていないようみえます。
ただし、人口減少や超高齢社会に今後日本が向かっていくことはだれの目にも明らかであり、不動産という資産に対する見方が大きく変わりつつあります。
そして場所や地域によっては、負の資産となった空き家の問題が深刻にならないように解体費用などの助成金を導入し、早期の解決を図ろうとする自治体もあります。
空き家問題は、利用をしなくなった建物の義務を果たしていない結果、起こりうる問題です。
日本では土地の所有権が認められていて、自由に土地を売買できます。また都市計画法や建築基準法などの規制内であれば、自由に建物などを建てることができます。従って、本来なら土地に建物を建てても建てなくても、それは所有者の自由です。
建物を建てた場合、不動産という資産は所有するだけで固定資産税がかります。固定資産税を支払わないと所有者としての義務を果たすことにはなりません。自治体に迷惑がかかります。加えて一度建物を建てたら、存続する限り利用できるという権利を得ると同時に維持管理する義務が発生します。
建物がない土地の場合も、仮に土地の管理をせず雑草が生い茂り、ゴミが不法投棄され、場合によっては動物や不審者の住処となってしまいます。住環境や治安が悪化し、近隣住民にも迷惑がかかることもあるでしょう。
さらに深刻なのが、この問題を放置すると「逃得」のようにどんどん広がり、あっという間に地域全体の問題になることです。この空き家はもはや国家的に取り組むべき問題となってしまったのです。
解体の助成金とは
現在行われている空き家対策に「特定空家等」に認定されるというものがあります。
「特定空家等」とは「空家等対策の推進に関する特別措置法」上、周辺の生活環境に深刻な影響を及ぼしている空き家として、そのまま放置すると著しく危険であり有害となるおそれのある状態、または適切に管理されていないことから著しく景観を損う状態にあると認められる空き家をいいます。
特定空家等になると、住宅用地としての特例が外れるので、固定資産税が上がります。
「税金を上げる」というペナルティで、放置を回避させる意図の制度となっていますが、そもそも管理していないので税金そのものを滞納している空き家も多く、この程度のペナルティでは大きな効果は見込めません。
あまりにも周辺環境に悪影響を与え、緊急性が高い特定空家等は、行政代執行という形で強制的に取り壊すという最終手段に移行します。実際、この事例も増えてきました。
この行政代執行に伴う費用は、本来なら所有者が支払うものですが、自治体の持ち出しとなっている状態が続いているようです。放棄された空き家を結局自治体が片付ける状態が続くと、取り壊し費用が積もり、財政を圧迫することになりかねません。
そこで、取り壊し費用を少しでも行政が個人を助成し、空き家の所有者が自ら片付けを行うことを促す政策が、解体の助成金です。
自治体の助成金例
空き家問題は不動産需要が減少する地方で大きな問題となりつつあり、以下のような自治体で空き家解体の費用の補助や助成を行っています。
- 神奈川県厚木市 老朽空き家解体工事補助金
- 荒川区 老朽空家住宅除却助成事業
- 福生市 空き家解体費用の補助
- 茨城県笠間市 空き家解体撤去補助金
また、ほかの自治体でも「老朽建築物」の建て替え事業として、やはり建物の取り壊しに対して補助や助成を行っています。
この老朽建築物建て替え事業の場合は、木造で耐震性が低い建物が密集している地域での火事や地震での減災を主な目的としています。
そのため直接的には「空き家対策」とはいえないかもしれませんが、取り壊し費用を助成することで、空き家になってしまってからの対策でなく「空き家にならないための対策」と考えられます。
ただし、これらの助成金・補助金交付要件・交付金額は、地方自治体によってさまざまです。
また、市税などを滞納している場合、通常は助成金をもらうことはできません。長年固定資産税も払わず放置してしまった空き家には、補助がない点に注意をする必要があります。
空き家問題の最大の対策は、空き家とならないために、早い段階でその不動産をどうするべきか判断することです。
判断さえすれば、あとはいくらでもその行動を後押ししてくれるサービスや制度があり、今回紹介した行政サービス以外にも民間でもさまざまなサービスが生まれつつあります。以上を踏まえて空き家問題を再度考えてみましょう。