古家の解体費用はいくら?建物構造別の相場の例と節約する方法
本記事では、古家の解体費用に関する基礎知識と相場の例、解体費用を節約するポイントをご紹介します。
解体工事は新築工事と違い、あとに何も残りません。可能な限り費用を抑えたいところですが、そもそも解体費用はどれくらいかかるのでしょうか?作業員の手間賃が大半を閉める工事を節約することなどできるのでしょうか?
じつは解体工事費用には一応の相場があり、節約も可能です。順に解説していきますので、これから解体工事をされるご予定の方は参考にしてください。
古家の解体費用に関する基礎知識
それでは、解体工事の基礎的なことから解説します。
まずは「古家」がどんな家を指すのかご説明したあと、解体費用にどのような項目が含まれるのかご紹介していきます。
古家の定義
さっそく「古家」の定義から考えてみましょう。じつは、不動産業界に携わる方々でも「古家」と「中古一戸建て」の表記は明確に区分していません。
商慣習としては、リフォーム(リノベーション)すれば快適に住める家が「中古一戸建て」と呼ばれることが多く、老朽化で建物としての資産価値がほぼない場合に「古家」が使われます。
たとえば、不動産チラシやマイソク(物件資料)に「古家付き土地」のような書き方がされます。この場合は「中古住宅」として売りたいのではなく「土地」として売りたいということになります。
更地にしてしまうと固定資産税が上がるので「古家付き」で売られている土地はよく見かけます。資産価値のない古家付きで土地を売却するときは、買主から解体処分費の値引きを交渉されることがあります。
古家の解体費用の内訳
古家の解体費用は、大きく「建物の取り壊しにかかる費用、廃棄物処理費用、付帯工事費用、諸費用」の4つに分けられます。順番に、詳しくご紹介していきましょう。
建物の取り壊しにかかる費用
「建物の取り壊しにかかる費用」は、工事の施工に直接かかる費用です。内訳のうち、代表的なものをあげてみましょう。
内訳 | 備考 |
取り壊し費用 | 主に現場作業員や現場管理者の人件費 |
旅費交通費 | 現場で使う車両のガソリン代やパーキング代 |
保険料 | 工事保険や賠償責任保険など |
通信費 | 携帯電話やFAX、書類郵送費など |
多くの解体業者は「取り壊し費用」を平米単価(あるいは坪単価)と合計金額で記載しています。この単価は建物の躯体構造(木造や鉄骨造など)により変わり、重機が使えない場合は「手作業解体費」が別途必要です。
上述の現場管理費の他に、現場によってはガードマンの配置や前面道路の使用許可申請が必要になるケースもあります。
廃棄物処理費用
「廃棄物処理費用」は、廃材をトラックに積み込み、廃棄物処理施設まで運搬して処理する費用です。木材・鉄くず・瓦・ガレキといった品目ごとに持ち込む中間処理施設が異なります。
なお、同じ品目であっても持ち込む処理施設によって処理費用が違います。ですから、この項目は解体業者によって見積もり金額に差が出ます。
付帯工事費用
解体工事の代表的な付帯工事は「仮設工事、敷地内にある建物以外の解体、残置物処分」です。
仮設工事には、ほこりや破砕した破片が飛散しないように現場を囲う「足場・養生シート」や現場に必要な「仮設水道、仮設トイレ」などが含まれます。
建物以外で解体の対象となる物には「庭石、庭木、ブロック塀、カーポート、浄化槽、地中埋設物」などがあります。これらの解体に必要な費用は各現場で大きく変り、見積もり金額を左右します。
残置物とは家屋に残された家財のことで、解体業者に依頼して処分する場合は別途費用がかかります。なお、家財の中でもリサイクル法の対象となる以下の4品目は、所有者が処分するのが原則です。
- エアコン
- テレビ
- 冷蔵庫・冷凍庫
- 洗濯機・衣類乾燥機
上述の家電の収集運搬は「産業廃棄物収集運搬業の許可」ではなく「⼀般廃棄物収集運搬業の許可」が必要です。許可を持たない解体業者に処分を委託できませんので、ご注意ください。
諸費用
これまでご紹介した費用は「工事原価」と呼ばれます。いっぽう、現場工事に直接関わらないものの会社を維持するうえで必要な経費を「諸経費(または一般管理費)」と呼びます。
主に事務所など、現場以外の場所でかかる費用が諸経費に該当します。代表的なものをあげてみましょう。
- 人件費(営業マンや事務員)
- 備品
- 水道光熱費
- 通信費
- 旅費交通費
- 広告宣伝費
- 技術関連費
- 保険料(事務所の火災保険など)
- 法定福利費
諸経費は一工事ごとに算出できないので、工事原価に会社規定の「諸経費率」を掛けて計算します。
他にも、届出(建設リサイクル法で定められた届出、道路使用許可の申請手続き、各地の条例に沿った申請手続きなど)が必要な場合に届け出作業をする人件費を諸経費に含めるケースがあります。
古家の解体費用が決まるポイントと相場の例
つづいて、古家の解体費用を左右する要因や、建物の構造ごとに解体費用の目安をご紹介します。
古家の解体費用が決まるポイント
古家の解体費用は「建物の所在地域、構造の種類や大きさ、解体作業を依頼する会社」の影響を受けます。それぞれ、詳しく説明していきましょう。
建物の地域
建物の取り壊し費用の内訳は主に作業費で構成されているので、作業効率が金額に大きく影響します。ですから、建物がどんな環境の中に建っているかで解体費用が変ります。
たとえば、前面道路の横幅が狭くトラックを停めておけないような場所は、小運搬費用がかさみます。隣接する家が近すぎる場合は重機が使えず、人力による手作業解体になり余分に費用がかかります。
エリアによっても解体費用の相場が異なります。例として東京と埼玉の相場を挙げてみましょう。なお、どちらも道路幅4m以上、隣地の建物との距離1m以上の似た物件で比較してみます。
- 東京の木造住宅の場合 ⇒ 40,000円/坪
- 埼玉の木造住宅の場合 ⇒ 28,000円/坪
一般的には土地や人件費が高い地域ほど、解体工事費用も高くなる傾向があります。
建物構造の種類、大きさ
解体工事費は「木造住宅、鉄骨造住宅、RC造」など建物構造の種類によって相場が異なり、堅牢な構造ほど高くなります。
また、平米単価や坪数単価で金額が定められている工事項目が多く、床面積が広い建物や階高が高い建物ほど解体費用が増加します。
古家にアスベストが使用されている場合は、別途除去費用が必要になります。2004年以前に建った建物は、ご注意ください。
参考:アスベストの撤去・除去に掛かる費用はいくらぐらいですか?
解体を依頼する会社
各解体業者には、慣れや保有重機によって解体が得意な建築物と不得意な建築物があります。得意な建築物を解体するときは効率が上がり、効率が上がると解体費用が安くなります。
諸経費率・利益率も会社によって違うので、解体工事の見積もりを複数社から取って比較検討することが大切です。
なお、解体費用の相場については以下の記事でも詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
古家の解体費用の例
つづいて「木造、鉄骨造、RC造」の解体費用の目安をご紹介しましょう。アパートや長屋は特有の費用が発生するので、あわせて解説します。
木造住宅
木造住宅とは、構造(住宅の主要な部分)に木材を用いた住宅のことです。柱や梁で組んだ骨組みで家を支える「在来工法」と、パネルで造った面(床・壁・天井)で家を支える「2×4(ツーバイフォー)工法」があります。
木造住宅の解体費用の相場は「31,000円~44,000円/坪」くらいです。在来工法住宅より頑丈で多くの木材を使う2×4工法住宅の解体費用のほうが、高くなる傾向があります。
屋根材や外壁用塗料などに石綿含有建材を使用した住宅は、別途撤去処分費用が必要になり解体費用が上がります。
鉄骨造住宅
鉄骨造住宅とは、構造に鉄骨を用いた住宅のことです。鉄骨には、重量鉄骨(鋼材の厚さが6mm以上)と軽量鉄骨(鋼材の厚さが6mm未満)があります。
鉄骨造住宅の解体費用の相場は「34,000円~47,000円/坪」くらいです。軽量鉄骨造より、重量鉄骨造の解体費用のほうが高くなる傾向があります。
屋根材や外壁用塗料、吹付けアスベストなどの石綿含有建材を使用した住宅は、解体費用が高額になります。
RC住宅
RC住宅とは構造に鉄筋とコンクリートを用いた住宅のことで、鉄筋コンクリート造住宅とも言います。
RC住宅の解体費用の相場は「35,000円〜80,000円/坪」くらいです。コンクリートを破壊する際に騒音や振動が出やすく、近隣への配慮が必要です。
鉄骨造と同様に、屋根材や外壁用塗料、吹付けアスベストなどの石綿含有建材を使用した住宅は解体費用が高額になります。
アパート・長屋
アパートと長屋の解体費用は、その構造により上述の相場に準じます。ただし特有の費用が発生するので、ご紹介しておきます。
アパートは木造や軽量鉄骨造で建築された賃貸用の集合住宅で、構造上の制限により2〜3階建ての小規模・低層住宅が大半です。アパートを解体するときには、賃借人に支払う立ち退き料が必要になります。
長屋は集合住宅の一形態で、複数の住戸が連なっており、隣り合う住戸はくっついています(壁を共有している)。連続するうちの1棟を解体するときは、隣家との切り離しと、外壁の補修工事が必要になります。
古家の解体費用を節約する方法
最後に、解体費用の節約方法を4つご紹介します。住宅を解体するご予定がある方は、ぜひ参考にしてください。
複数の解体業者に相談する
先述のとおり、各解体業者には「RC構造が得意」や「マンションが得意」といった得意・不得意があります。得意な解体工事は効率よく短い工期で完了するので、見積もり金額が下がります。
とくに住宅密集地などの難しい工事では、効率の違いによって大きな金額差が生じます。複数の企業に見積もりを依頼して、金額や工事方法を比較しましょう。
複数の解体業者を比較することは、信頼できる業者とそうでない業者を見分けるのにも役立ちます。
マージンを抑える
建て替えでは「新居を建てる建築会社に、解体工事を依頼すればいい」とお考えの方が多いのではないでしょうか。こ場合は、解体業者に直接依頼するよりも(中間マージンや管理費が乗るので)費用が高くなります。
少しでも費用を抑えたいのであれば、解体業者に直接依頼するか、解体業者の紹介サービスを利用するとよいでしょう。解体業者の紹介サービスは、無料または紹介料程度で利用できます。
解体業者と直接取引する場合は業者選びや交渉を自分でおこないますが、紹介サービスを使うと複数の業者の見積もりを提示してくれるうえ、業者との交渉もフォローしてくれます。
工期を指定しない
他の業種と同様に、解体業者も閑散期は値引きしてもらえる可能性が上がります。逆に繁忙期や工事日直前の申し込み、短工期は業者の言い値になりやすいです。
可能であれば解体を完了したい時期の2~3か月前に申し込み、なおかつ工事日を解体業者の都合に合わせるとよいでしょう。
解体業者のペースに合った工事期間で効率的に施工できると、工事にかかる費用を抑えられます。工事費用が抑えられると、見積もり金額も下がります。
不要な物を可能な限り処分する
解体業者に家具などの家財を処分してもらう場合は、分別が厳しい産業廃棄物扱いになります。よって「解体した廃棄物と混ぜて捨てる」というわけにいかず、処理費用がかかります。
ですから、残置物を減らすと解体費用を下げる効果があります。地域の無料回収で処分できるもの(家庭ゴミ、小さな家財道具、植木鉢など)は、自分で処分するといいでしょう。
売れるものは、売りましょう。とくに、鉄くずは高額で引き取ってもらえます。たとえば金属の門扉を解体してもらうと有料ですが、自分で金属買取業者に持ち込むと売れます。
古家解体工事の相場や節約方法まとめ
古家の解体費用は所在地の環境や建物構造、建物の大きさ、解体を依頼する業者などの要因によって決まります。とくに構造の影響が大きく、木造・鉄骨造・RC造と堅牢になるほど高額になる傾向があります。
解体工事費を節約するなら、できるだけ家財を自分で処分して残置物を減らしたり、解体業者と直接取引したりするとよいでしょう。解体業者の紹介サービスを介して、見積もりを比較することも有効です。
解体工事は建築工事と違い、後に何も残りません。できるだけコストを抑えたいところですが、業者選びで失敗すると余分な費用がかかるうえ近隣とトラブルになるケースもあります。信頼できる業者を選びましょう。